4月1日は何の日でしょうと聞かれれば殆どの人は
「エイプリルフール」と答えるだろう。
或いは新元号『令和』が発表された日と答えるのかもしれない。
自分にとっては、4月1日は父の誕生日だ。
今日は父の88歳の、訪れなかった誕生日。
父のことを好きだったのか或いは嫌いだったのかかと問われれば
嫌いではなかったが・・・好きとも言えない、そんな煮え切らない
距離感だったと思うがしかし当たり前のように涙は流れ落ちる。
足を悪くして、白内障で視力も低下し最近では歯痛にも苦しみ、
ここ半年ほどは怒声が飛ばなかった日がない。
父は案外怖がりな人で、ならば頭の中には不安しかなかっただろう。
無尽蔵に押し寄せてくる恐怖と常に共にあったのだ。
物忘れが増え認知症も気にしていたが少なくとも自分の見ていた限りでは
その様な兆候はなかったし、きっと今日と同じ日がずっと続くのだろうと
その時は何の疑いも持っていなかったのだがそうではなかった。
政治に悪態つきながらもきっと楽しみにしていたであろう
新元号もオリンピックも見ることなく、2月の半ばに突然旅立ってしまった。
救急車を呼び救急隊が駆けつけるまでの間心臓マッサージを施し、
一緒に救急車に乗り搬送された病院でそのまま看取る形となった。
誰も最後の言葉は聞いていない。
父は眠るように静かに穏やかで、笑みを浮かべているようにすら、見えた。
父は歌の上手い人で、宴会の席ともなれば皆からステージに呼ばれ美声を披露し
またクラシック音楽も好きで日曜の朝ともなれば大音量でレコードを鳴らし、
その様な環境に育った自分の音楽は間違いなく父から貰ったものだと思う。
嘘であってくれれば良かった。
貰ってばかりで何も返すことができなかった・・・。