森林王者モリキング
週間少年ジャンプ2020年20号から始まった、長谷川智広による新連載
『森林王者モリキング』が面白い。
モリキングは長谷川智広のデビュー作『恋のキューピッド 焼野原塵』や
『青春兵器ナンバーワン』などに続く、3作目のギャグ漫画である。
以前読み切りで掲載された同名作品の正式連載版で、キャラクターや
設定などをほぼ踏襲し、近年のジャンプ漫画としてはやや珍しい
王道の開始スタイルとなっている。
(読み切りから連載に"格上げ"された作品でテコ入れ無しは減っている)
最近のジャンプ作家は一つヒットが出てもその後が続かない、
或いはジャンプ本誌に戻って来ない漫画家も少なくない。
そう言った中でコンスタントに連載を獲得出来ている漫画家に光るのは
才能やセンスもあるのだろうが一番はやはり「堅実さ」ではないだろうか?
特にギャグ漫画は絶対的に「描ける人」と「描けない人」とで隔たりがあり、
今のジャンプは昔と比べギャグが弱く、王道のギャグ漫画が描ける作家は貴重。
そんな中、自分も応援している長谷川智広の待望の新連載がジャンプ本誌で
スタートした事は真に嬉しい限りである。
長谷川漫画の特徴は「描写を逃げない」事だと思う。
普通ならば「ギャグですから・・・」と適当に誤魔化して書くような部分を
一々丁寧になぞっていく。ここが長谷川の「一番面白くする部分」だろう。
今回も第二話でその特徴が現れている。普通は居候型の主人公は第一話で
"何故か"あっさりと家族に受け入れられるか、或いは部屋に居る事を
そのまま隠し通そうとする展開になると思うのだが、モリキングでは
一家の一員として認められる様(?)を丸々一話使って描いている。
漫画自体は紛れもなくギャグ漫画なのだが、進行自体はストーリー物の
それであり、ギャグでやれば通常野暮ったくなりそうなものなのだが、
作者の気真面目さか?そう言ったシーンを丁寧に描写していく事が
逆に面白味=狂気を生んでいる。ある種、舞台コント的なのである。
(アメリカンファミリードラマの様だとも言える)
ギャグを解っていない者がギャグ漫画を描こうとすると必ず
「これは○○ネタなので○○の事を知らない人には分らないかな」
・・・をやってしまう。
つまりギャグを「元ネタいじり」としか認識していないのだ。
だからつまらない。その状態が面白い事への理由が存在しないからだ。
対して面白いギャグ漫画を描ける人はそれが「何故面白いか」の
説明力・プレゼン力に長けている。
だからこそツッコミが生きてボケが引き立つ。
モリキングがこの先どの様な世界を紡ぎ出していくのか、
それは未知数ではあるが自分は何も心配していない。
多分この作者ならば本来不要な描写までも丁寧にしてしまうだろうからだ。
どう転んでも面白くなるに決まっている。
もしこの記事を読んでモリキングに興味を持たれた方は、
現在第一話が無料公開されているのでこの機会に読んでみてほしい。
https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331631431325
ただし、ジャンププラスでの無料期間がいつまでなのか分らないので
もしリンクが無効になっていたら申し訳ない、本誌又は何れ発売となる
コミックスをチェックしてみてほしい。