カベジマ研究所2

Legasyswareのゲーム開発と日常をゆるく適当に綴っていくブログ

漫画の空気が変るとき

ふと、以前読んでいたとある漫画の世間での評判が気になり、
amazonカスタマーレビューを読んでいて思ったことを書いてみる。


その漫画は人気が出ずに途中で打ち切りになったものであったのだが、
やや惜しい内容ではあった。


中盤では確かに今後に期待を持たせるような「化ける」可能性を感じたのだが、
その次の回から急に空気は変り、以前よりもむしろ面白くなくなってしまった。


主人公は一見あまり魅力的には映らない天然キャラで感情移入しにくい。
主人公の周辺キャラも端的に言って変人ばかりで人気の出そうな気がしない。


ただ、徐々にではあるが物語世界には変化が訪れ、そしてまだはっきりと
目的の見えていなかった主人公の成長を描きかけていた。


恐らく、その空気が変った週に打ち切りが伝えられたのだろう。
作者的にはここから本編に入っていきますと言うところだったのだろうが
正直遅すぎた。


同じような流れで打ち切りになっていく漫画は多い。
経験の浅さが第一にあるのだろうがはっきりしているのは仕掛けるタイミングが
重要だと言うことともう一つ、スピード感と言うか読者の解りやすい導き方、


つまり不要な描写を抑えること、これを怠った漫画はほぼ自滅していると言うことだ。


漫画を描くことは難しい。特に週刊で連載を持つことは非常に難しい。
一つのエピソードを何話に分解するか、どのシーンを引っぱりどのシーンを
巻きで行くか、その判断をリアルタイムで行なわねばならない。


作者が自分のキャラクターに感情移入しすぎていると、つい余計なシーンを
挟みたくなったりする。そのキャラクターに人気が出て欲しいと思えば無理もない。


けれどそれが物語のテンポを悪くしてコマを消費しページを切迫してしまえば
本来必要であるはずのシーンやコマを間引かざるを得なくなる。


読者の側に立てば、例えばあまり好感を抱けていないキャラクター達の
おふざけシーンなどは不要に感じるだろうし、それを入れたことで
本来必要なはずのシーンや演出が簡略化されれば益々伝わりにくくなる。


冒頭の漫画のレビューでは主人公のキャラクターに対する嫌悪の感情が
多く書かれていた。


そのキャラクターには自分は特に嫌な印象はなかったのだが展開の遅さに苛立ち、
そして早々に主人公に心の成長がもたらされることを期待していた。
そして前述したように可能性はあったのだ。


だが時既に遅し。


読者はキャラクターを好きになってくれるどころか、嫌ってしまっていた。


作者はきっと序盤を時間をかけて丁寧に描いていくつもりだったのだ。
主人公の愚かしさや未熟さを最初に見せることで後半にりりしく成長した姿を
描き出したかったのだろう。


しかし物語は序盤で打ち切りが決まってしまった。巻き返しも不可能である。


思うところは二つ。


一つ、よほどの人気作家でもない限り、連載はいつ打ち切られるか分らない。
序盤はのんびりしていてはいけない。特に週刊連載では。


二つ、読者はそう言った事情も込みで作品を批評するべきである。
人気が出なかった漫画の読者レビューを見ると漫画の登場人物に対する人格攻撃が
多く見つかる。裏返せばキャラクターしか読んでいない。


漫画家が未熟な上に読者も未熟であれば良い漫画は育ちにくい。
どちらが成長すべきかといえば自分は読者も成長すべきだとそう思っている。


今はネットでリアルタイムに読者の反応が見られる時代。
そんな中で迷走していく作品は案外少なくないのかもしれない。


作者がタフでなければならないと言うのは時代なのかもしれない。
でも読み手も短絡していないのだろうかと、苦々しく感じることもたまにある。